シャンボンの背中
2009年のフランス映画。
原題はMademoiselle Chambon
舞台はフランスの田舎町。
そこに暮らす普通の夫婦、ジャンとアンヌ・マリー。彼らには一人息子がいる。
最初のシーンは家族そろってのピクニック。
ここで、この夫婦が上流階級でなく、インテリでもないことがさりげなく観客に示される。
また、夫婦それぞれの性格も表現されている。
妻のアンヌ・マリーが背中を痛める。この出来事から物語が動き始める。
小学校に息子を迎えに行くジャン。そこには代用教員のシャンボンがいた。彼女からジャンの仕事について生徒に話をしてほしいと依頼され、引き受ける。ジャンは大工であることが観客にわかる。
さらに、ジャンはシャンボンの下宿の窓枠を直すことに。
ジャンがシャンボンの窓枠を直す日のシーンがすばらしい。
大上段に振りかぶることなく、淡々と、しかし、丁寧に描かれている。
作業をするジャン。作業を終わりを、別の部屋で仕事を片付けつつ待つシャンボン。
シャンボンがいる部屋のドアはきっちり締められている。
互いに親しくなりたいけど、切り出せない場面が続く。
やがて、作業を終了してジャンがシャンボンを呼びに行くとドアが少し開いていて、シャンボンは眠っている。
この日、二人の間にこれといった大きな事件はない。
CDの貸し借り、バイオリンの演奏が互いを理解しあうのに役立つ。
何か事件によって二人の心が変化するのではなく、互いの人生や人柄を知るにつれて互いを意識するようになるという感じである。
こうして少しずつ、ゆっくりと話が進むのがリアルだ。別れか破滅か。終章への展開をあれこれ予想する余裕がある。
ジャンの父親の誕生会でシャンボンはバイオリンを演奏する。
ジャンがシャンボンを見る目を見たアンヌ・マリーは何かを感じる。だが、・・・
こうしてジャンとシャンボンの恋は最終局面へ向かって進む。
話の展開はありきたりかもしれないが、見ている間にありきたりと思うことはなかった。最後の展開は予想外の部分もあったが、現実はこんなものかもしれない。
単純なハッピーエンドにはならないところがフランス映画だね。