黒いスーツを着た男

2012年のフランス映画。

原題はTrois mondes。三つの世界という意味だそうです。

アランはま10日後に社長の令嬢との結婚を控えている。

会社の友人とバカ騒ぎをした際に一人の男性を自動車ではねてしまう。

友人たちの勧めに乗ったアランは男性を事故現場に残して逃げる。

だが、そこには目撃者の女性がいた。ジュリエットである。ジュリエットは警察に事故の連絡をし、被害者の家族にも連絡をする。アランが様子を見に病院を訪れたときに、彼女はアランを尾行してアランの生活を知る。

こうして、事故を起こしたアランの世界、事故を目撃したジュリエットの世界、事故に遭った不法滞在のモルドバ人であるヴェラとその夫の世界が交わることになる。

轢き逃げした人間が本当に悪人であれば告発するのに躊躇いはないが、それがまともな人間で、事故を起こしたことを悩んでいたりすると、告発を躊躇してしまう。優しい人物であるがゆえに、警察に告発することも、被害者に話すこともできない。しかし、話さないですませられるわけもなく、結果的に他人に優しいということが、時として他の他人を傷つけることになってしまう。人生は一筋縄ではいかないものである。

一つの事故が何人もの人間の人生を狂わせる。

見終わった感覚はまさにフランス映画。そこに解決方法が示されているわけでもなければ、勧善懲悪の世界が展開するわけでもない。運命に従わざるをえない人間の孤独、哀しみが胸をよぎるだけである。