無宿(やどなし)

1974年公開の映画である。

映画を作る人達には、男の友情というテーマが最重要テーマなのかもしれない。
男と女の愛や家族愛などよりも思い入れがあるのかもしれない。
「そんなことはない。男と女の愛を描くほうがの圧倒的に多い。」
そう反論されるだろう。まったくその通りである。だが、
『真夜中のカウボーイ』、『スケアクロウ』、『ボルサリーノ』などがあるのも事実ではある。

この作品は『冒険者たち』をモチーフに作られたそうである。
二人の男と一人の女。男と男の間には友情がある。三人には奇妙ともいっていい三角関係が形作られている。
二人の男を高倉健勝新太郎が演じ、女を梶芽衣子が演じている。

高倉は後年『あうん』で同じような関係を演じている。

さて、この作品では勝が大熱演である。セリフもほとんど勝が演しゃべっている。汗を流し、舟をこぎ、海に入る。殴られ、飯をかっくらい、女を背負って歩く。
一方で勝特有のやんちゃっぽい演技も随所にみせる。

高倉はほとんどしゃべらない。特に前半は顕著である。ゆえに、後半でしゃべるシーンが印象深くなっている。

梶は、美しい。特に日傘をもっているシーンでは一段と映えている。

一時期、日本映画はこんなカメラアングルで撮っていたことを思い出させてくれた映画である。